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「翔汰ー。バス来たよ!」
その声が翔汰を考え事から呼び戻した。
バス停で叫んでいる少年に目を向ける。
翔汰と同じクラスの泉義勝(いずみよしまさ)だった。
彼は野球初心者の一人だった。
中学まで陸上のエースだった彼は、高校に入学して心機一転。
一切陸上と縁を切った。
理由はよくわからないが、野球に憧れていたらしい。
「今行く! ってあれ?」
先ほどまでいた細身の少年の姿はどこにもない。
一体どうやって消えたのか、綺麗にいなくなっている。
「本当変な奴……」
そんな不思議な印象を残して少年はいなくなっていた。
向こうまでの道を一瞥してみたが、陽炎が揺れているだけで少年の姿を見ることはなかった。
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