不思議な少年

14/14
前へ
/342ページ
次へ
「あのさ、津田って知ってるか?」 翔汰がそう尋ねると、裕希は驚いた顔つきで、あぁ、と頷いた。 「そいつから伝言もらったんや」 すると裕希は眼鏡を押し上げて読んでいた本を閉じる。 「明日から入ってくるって。あいつ意味分からん奴やった」 その話を聞くと彼はくすりとその言葉に笑った。 「すまないな沖田。あいつはあんな奴だから、気にしないでくれ」 「……安藤?」 『あの超無表情の安藤が笑った!?』 バスの中に部員の声が響く。 それほど裕希の笑顔は驚くものだった。 「明日か、ありがとう」 眼鏡を押し上げてまた本を読みふける。 「ちょ、安藤って普通に喋るんやなぁ」 にやにやと俊二は笑って珍しい光景を思い出しているようだった。 「びっくりしました」 翔汰も息を吐いて、力が抜けたように前を向く。 「その新入部員、めっちゃ楽しみやわ」 その俊二の声がやけに耳に残った。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1381人が本棚に入れています
本棚に追加