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「あのさ、津田って知ってるか?」
翔汰がそう尋ねると、裕希は驚いた顔つきで、あぁ、と頷いた。
「そいつから伝言もらったんや」
すると裕希は眼鏡を押し上げて読んでいた本を閉じる。
「明日から入ってくるって。あいつ意味分からん奴やった」
その話を聞くと彼はくすりとその言葉に笑った。
「すまないな沖田。あいつはあんな奴だから、気にしないでくれ」
「……安藤?」
『あの超無表情の安藤が笑った!?』
バスの中に部員の声が響く。
それほど裕希の笑顔は驚くものだった。
「明日か、ありがとう」
眼鏡を押し上げてまた本を読みふける。
「ちょ、安藤って普通に喋るんやなぁ」
にやにやと俊二は笑って珍しい光景を思い出しているようだった。
「びっくりしました」
翔汰も息を吐いて、力が抜けたように前を向く。
「その新入部員、めっちゃ楽しみやわ」
その俊二の声がやけに耳に残った。
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