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休み時間のたびに達也の席は賑わっていた。
それも重ねる毎に達也を見に来る者は増え、最後には廊下側の窓は人だかりができる程。
そんな賑わいの中、六時間目前の最後の休み時間が来た時だった。
急に達也の周りが今までと違うざわめきに包まれた。
彼は立ち上がったかと思ったら人波を掻き分け、翔汰の席に来た。
「ねぇ、今日部活あるでしょ?」
昨日と同じく突然尋ねる達也。
「えっ? うん」
翔汰は少し焦りながらも答える。
「そう。で……裕希に言った?」
やはり昨日と同じ少年だったという自信が翔汰に芽生えた。
「言ったよ。わかったってさ」
それを聞くと、達也は営業スマイルと言わんばかりににっこり笑って、
「ありがとう」
と言った。
それを見た女子生徒から歓喜の声が上がる。
短い会話の後、達也はそう言って、また席に戻った。
一瞬クラス中の視線が翔汰に集まった。
(怖ー。注目的ですか……)
達也が去ったあとは以前と同じく、見物客のいる休み時間になった。
――そうして放課後。
部活に行く生徒たちや帰宅する生徒たちが教室から出ていく。
翔汰もそれに混じっていった。
彼のいちばん楽しみな時間が始まったのだ。
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