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グランド整備している翔汰たちの元に少ないが部員が続々と加わる。
泉や慶哉、後から来た啓太もトンボで丁寧に地面をならしていた。
「――先輩」
静かな低い声が翔汰たちの背後から聞こえてきた。
「ん? あ、安藤か」
そこにはすらりとして背の高い、眼鏡の少年の姿があった。
「どした?」
俊二がトンボをする手を止めて、顔を上げる。
「そいつの球を俺が受けます」
そう言った裕希の瞳は輝いていて、顔つきは何か目的があるような真剣な表情をしていた。
「まぁ、キャッチャーはお前だけやからそうなるわ」
帽子を被り直して俊二はそう言った。
「……中学まで、バッテリー組んでたので」
彼は衝撃の発言を行った。
翔汰を始め、聞こえた部員たちは目を見開き驚いている。
「はい?」
俊二も驚いてトンボを地面に落としてしまった。
「本当です」
静かに目を伏せて、裕希は壁打ちする達也を見た。
「久しぶりに、あいつのボール受けたいんで」
「そりゃかまんけど……」
俊二は物静かな裕希のここまでの熱意に圧倒されていた。
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