転校生

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「まぁええわ」 俊二はそう言って、再びトンボで土を均す。 「近藤さん」 「何や?」 翔汰が疑問をぶつけてきた。 「凛紀さんはどうなるんです?」 凛紀とは西高校の現ピッチャー、井上凛紀(いのうえりんき)の事だった。 もし、達也がピッチャーなら凛紀はどうなるのか? 翔汰にはそんな疑問が燻っていた。 「確かにそうやな」 俊二も腕を組んで考える。 そこまで考えていなかったようだった。 「俺は別にいいよ」 静かで、落ち着きのある深い声が翔汰たちの耳に届いた。 翔汰たちが振り向くと、少し長めの黒髪の少年がいた。 背が高く、すらりとした体型は学ランによく映える。 その彼の切れ長の瞳がこちらを見ていた。 「凛紀さん!」 渦中の人物登場に思わず翔汰が叫ぶ。 凛紀本人が先ほどの話を聞いていたのだ。 「俺、本来ピッチャーじゃないから」 整った顔立ちの少年は続ける。 「代役でやってたし、元のポジションでプレーしたい。それに……」 そこまで言うと、口をつむぐ。 凛紀は中学まで内野――サードだった。 リトルで少しピッチャー経験があると言う理由で現在まで投げていたのだ。 「凛紀がそう言うならええんちゃう?」 「俺もピッチャーの球見たいし」 凛紀の意見を聞いた俊二達は、そう言った。
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