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「じゃ、二人ともヨロシク」
俊二の促しに達也はマウンドに、裕希は本塁に向かった。
「俺らはこっちでええか」
翔汰たちはボールがよく見える場所に進んでいった。
達也はとてもマウンドが似合っている。
制服にスパイクをはいた達也はマウンドを確認するように足で均していた。
その手には使いならされた黒いグローブ。
自らの『投げたい』という志願はいったいどこまですごいボールなのか。
そしてその自信は何なのか……西高野球部員たちは期待の目で見ていた。
ボールを受け取って、彼は確認するように指でなぞっている。
マウンドに立つ少年の横顔に翔汰は見覚えがあるような気がするのに思い出せないままだった。
何球かキャチボールをして、一呼吸置いた達也。
そして、一人のピッチャーはゆっくりと足を上げてボールに命を吹き込んでいく。
その一球が彼らの夏を変えるとは誰も思っていなかった――。
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