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「はぁ……」
一際大きな溜め息が一人の少年から聞こえてきた。
春先だと言うのに、うだるような暑さのせいで周りの景色が揺れる。
日なたに立つと自然と背中が暖かくなり、ついつい眠気を誘う季節がまたやってきたのだ。
新学期が始まってまだ随分と経ってない月の終わりに、一人の少年の気分は最悪で晴れ渡る空とは対照的に暗かった。
一言で語るなら元気が取り柄の野球少年という風貌だが、その顔は不機嫌そうである。
それは今日の試合の結果が関係していた。
他の部活の声がこだまするグラウンドの先に、暑さでゆらめくスコアボードがある。
そこには十六‐二の文字がまだ、白くはっきり残っていた。
それを見ると改めて力の差がはっきりと分かった。
コールド負け――。
彼のチームでは当たり前の光景となっている。
彼らの学校の野球部は見ての通り弱い。
それもかなりの弱小高だった。
ほんの数年前は、甲子園出場常連の有名野球部として部員数も今の何倍もあった。
しかし現在はわずか八名と、頼みこんで試合に出れる状況となっている。
「これで入学してから七連敗。俺ってどこで間違ったんやろ」
最近はこればかりが口癖となっていた。
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