天才

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整った綺麗な投球フォーム。 それを見れば誰もが思わず息を飲む。 翔汰も隣の慶哉も達也への目線が離せずにいた。 一発で集中された瞳はキャッチャーである裕希のミットへと注がれている。 ピッチャーの達也の顔。 その横顔は真剣で、誰も寄せ付けない雰囲気があった。 あの、不思議な空気を纏う彼とは違う一面。 乾いた鋭い音がした。 風を切るボールの音の後に。 ミットに収まるボールは、裕希の手によってゆっくり返される。 見ていた一同にぞくりと寒気が走った。 翔汰も瞳を見開き、固まっている。 これが……昨日出会った時と同じ少年だと疑うほど、その一球はイメージを払拭するのに威力は絶大だった。 誰もがこの少年と自分の差をひしひしと感じる。
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