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その内の何人かは、あっと声を漏らしていた。
「……速い」
翔汰はぽつりと言った。
「そうやな」
隣にいた慶哉は達也に目を向けたままそう言った。
まるで、蛇にらみされた蛙のように瞳を離せずにいる。
そんな中、二人の少年は違った。
「こりゃ、驚いた。速球投げるピッチャーか」
俊二は場に削ぐわない楽天的な声を上げる。
「あいつの本気は、あんなんじゃない」
それに続き、凛紀もぼそりと呟いた。
「凛もそう思うか。……次あたり見れるんやないか?」
くすりと笑う俊二はもう一度バッテリーを見て、確信した。
鋭い瞳の少年が次に魅せてくれる球。
それが打者を打ち取れる、最高のボールだという事を。
絶対に打たれない自信があるピッチャーの雰囲気がマウンドから痛いほど伝わってくる。
観察力が優れている俊二は少しの空気の違いも掴みとり、それを感じる事を得意としていた。
凛紀はと言うと、彼自身の野球センスからそう言ったらしい。
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