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「……ただボール受けるだけやのに、完全防備の理由が分かった」
啓太が改めて言う。
そう裕希の姿は試合そのものだった。
プロテクターにレガースとキャッチャーマスク。
「あの球を捕るには本気であいつと向き合わんと無理だよ」
凛紀は腕を組んで二人の様子を見ていた。
「……そうやな」
凛紀の意見に納得して啓太も頷く。
一方翔汰たちはと言うと慶哉や泉と食い入るように彼の投球を見ていた。
「……慶」
「何や?」
翔汰は隣にいる旧友の顔を見た。
「津田って何処かであったか?」
翔汰はマウンドにいる少年の横顔を見ながら過去の記憶をたぐり寄せる。
「翔汰もか。俺もそんな感じがするんや」
――遠い昔、彼と会った気がする。
そんな不思議な気持ちはぐるぐると翔汰の心をさまよって消化しきれない。
もう一度、達也と裕希……そしてマウンド、打席と順番に視線を移す。
この光景を何処かで見たことがあったのは確かだった。
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