天才

8/12
前へ
/342ページ
次へ
「一回も塁にランナーが出なかったんです。向こうのピッチャーのレベルが余りにも違いすぎてた……」 そう翔汰が言ったピッチャーこそ、今マウンドに立つ津田達也だった。 「アイツその時から天才って言われてたんです。あの時初めて会って、俺も……皆そう思ったと思います」 翔汰は本音を言った。 あの時達也を天才だとこの肌で直で体験したからだ。 そして天才がいるチームは全国というレベルを翔汰たちに見せつけた、そんな試合だった。 「……その試合、兄貴も見に来たよな?」 慶哉は自分の兄を見てそう尋ねる。 「ああ。津田を見たから、俺はピッチャー辞めたんだ」 突然彼は静かにそう言った。 その言葉が妙に耳に残る。 「……兄貴、嘘やろ?」 「冗談ですよね?」 翔汰と慶哉は凛紀の口から初めて聞いた言葉に心底驚いている。 そんな話今まで聞いた事がなく、凛紀がピッチャーから転向した理由を未だによく分かってなかったからだった。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1381人が本棚に入れています
本棚に追加