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「一回も塁にランナーが出なかったんです。向こうのピッチャーのレベルが余りにも違いすぎてた……」
そう翔汰が言ったピッチャーこそ、今マウンドに立つ津田達也だった。
「アイツその時から天才って言われてたんです。あの時初めて会って、俺も……皆そう思ったと思います」
翔汰は本音を言った。
あの時達也を天才だとこの肌で直で体験したからだ。
そして天才がいるチームは全国というレベルを翔汰たちに見せつけた、そんな試合だった。
「……その試合、兄貴も見に来たよな?」
慶哉は自分の兄を見てそう尋ねる。
「ああ。津田を見たから、俺はピッチャー辞めたんだ」
突然彼は静かにそう言った。
その言葉が妙に耳に残る。
「……兄貴、嘘やろ?」
「冗談ですよね?」
翔汰と慶哉は凛紀の口から初めて聞いた言葉に心底驚いている。
そんな話今まで聞いた事がなく、凛紀がピッチャーから転向した理由を未だによく分かってなかったからだった。
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