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「沖田ー」
ふと少年を呼ぶ声。
振り返ると、まだ若い男性が彼の名前を呼んでいた。
背の高い、がたいの良い男。
「あ、監督。なんッスか?」
監督と呼ばれた男は吹っ切れない様子でこちらを見る。
橋本豊(はしもと ゆたか)。
彼が所属する、野球部の監督だ。
三十前半と年齢も若く、野球部監督就任今月で三年目。
かつてない部の衰退ぶりに橋本は悩んでいた。
「また……負けたな」
虚しい結果も続くとやる気もなくなる。
「……はい」
彼も監督に返す言葉がなかった。
うつ向きながらグランドから出るチームメイト。
この後は帰宅するために近くのバス停に向う。
その足取りは端から見ても何があったのか問いたくなるほど重々しかった。
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