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「ん? 別にあんたに用じゃないんだけど……そうだ!」
くるりとポケットの中のボールが回った。
にやりと笑う少年に翔汰は一歩後ずさる。
「ねぇ、名前なんていうの?」
突然尋ねてきた少年の拍子抜けな問いに、思わず口が開いてしまった。
「はぁ?」
翔汰の反応も特に気にした様子もなく、少年は涼しい顔でこう続けた。
「だからさー。アナタの名前だって」
少年の方は初対面だと言うのに遠慮なく詰めよってくる。
翔汰は掴めない態度にどうしたら良いのか見当がつかず、見つめるだけしか出来ない。
それに加え、負け試合で気分は良くないのに、変な少年に絡まれている。
そう思うとますます自分が惨めで、何故だか腹が立ってきた。
「それとも、言いたくない?」
やけに機嫌が良い少年は首を傾げてそう言ってポケットの中からボールを取り出し、軽く投げる。
その動作に、翔汰はこの少年にどことなく見覚えがあるのを感じた。
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