恋人を射ち堕とした日

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        『―――――明智も厄介な荷物を遺して逝ったものよ………』   「まぁ……な………」     元就の言葉に、元親は包帯の巻かれた右脇腹を擦りながら苦笑する。             それは現世でたんまりと人の生き血を啜った双鎌の呪いか。はた又、光秀自身の怨念か………。       あれ以来元親は目に見えて体力が衰え、生気が失われ始めたのだった。       始めは軽く眩暈と気だるさを感じる程度だったが、次第に床を出るのもままならず、果てには口に入れたものをすぐ嘔吐してしまっていた―――しかも血液の混じったものを。       それでも元就は頻繁に四国に通い詰め、何だかんだで元親の世話に努めていた。   元親は終始元就に、止めろうつるぞ、と説いたが元就はそんなもの我には効かぬ、と鼻であしらった。そう言われてしまえば、元親はそれ以上反論出来なかった―――――元就が罪悪感を覚えての事と理解していたから。       それから情事を交す事はないが、せめてもと同じ床を共有するようになった。   名目上は夜中元親の身に何かあったら、という事。しかし口には出さないにしろ、元就は薄々感付いていたのだ―――この温もりを感じていられるのもそう長くはない…………           その矢先の、彼の一言だった。         .
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