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殴られた玲旺の体は何の抵抗のなく、その場に崩れた。
それなのに力を発するのをやめない。
「玲旺!お前がそんな風になるかもしれないから、聖世は僕にお前の事を頼んで言ったんだぞ!」
「聖世?」
玲旺が嘉晃の『聖世』という言葉に反応した。
「聖世は敵の罠を覚悟の上でここに来た。玲旺が聖世との関係を仕事上のモノだと割り切る事が出来ないのも聖世自身、承知しているようだった。だから、ここに来る前に僕にアテナからの招待状の事を話して、玲旺を見張っていて欲しいって言ったんだ。聖世は玲旺に言ったんだろ?自分の事より伊東君の救出を優先して欲しいって。それなら、伊東君を助けて聖世も救えばいい!どうしてそんな簡単な事を思いつかないんだ!この単純男!」
嘉晃の言葉に玲旺は焦点の会わない目を向けた。
「聖世を助ける事……出来るかな……」
目の前で聖世を連れて行かれてしまった不甲斐ない自分が?
「安心していい。万が一、聖世に何かあったら僕がお前を殺してやる。お前は忘れているみたいだが、聖世の事を大切に思っているのはお前だけじゃない。僕だって聖世が何よりも大切だ」
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