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敵の手に落ちた聖世はすぐに術を加えられて動けない状況にあった。
体中を縛り付けるのは聖世が最も苦手とする鋼鉄の鎖だ。
そしてクリスタルのような透明で固い塊の中に閉じ込められ、生きている事が不思議な状態に置かれていた。
術を加えられた直後に聖世の様子を見に来た者がいた。
実体のない巨大な力を持つ女のティタン神と、それに従う黒いフードを被った若い人間の男だった。
男の方は『気』を消していて同化しているのか転生したのか、それさえも分からなかったが、実体のない女のティタン神の方はすぐに誰なのか分かった。
ティタン神は聖世を包む透明の冷たい塊に触れながら聖世に語りかけた。
「メドゥーサか。お前もご苦労な事だ。ゼウスが何を言ったか知らないが、随分割りの合わない仕事をしているようだな」
聖世は声の主の顔を確かめようと目を開いた。
そこには実体のないティタンが透明な塊越しに閉じ込められた聖世を見つめていた。
鎖で全身を縛り付けられ、動く事さえ出来ない聖世は、そのティタンを睨みつけることさえ出来なかった。
『レア』
言葉にならない呟きを聖世が洩らす。
聖世は彼女をよく知っていた。
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