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『聖世はそう思っていてもメドゥーサはそんな風に思っていないぞ!』
そう言った時の玲旺の眼差しは聖世を見ていなかった。
それが妙に腹立たしく感じられて何だか少し悲しい気持ちになった。
玲旺は所詮、ポセイドンなのだ。
いつだって聖世ではなく、聖世の中にいるメドゥーサを見ているに過ぎない。
それなのに聖世が一番大事だという。
これでは、まるで両天秤に掛けられているようだ。
そんなのはズルイではないか!
それを思い知らされるたびに聖世は腹立たしいやら、情けないやら複雑な気持ちにさせられる。
でも、今日はいつもと違った。
今日は何だか泣きたくなるほど、悲しい気持ちになってしまったのだ。
そして、玲旺の一言でこんな気持ちになってしまう自分に憤りを感じた。
十五年という年月は長すぎて、一緒にいる時間は憎しみをすり減らしていたのかもしれない。
人間に生まれ変わる事を決めた時、二度と恋はしないと決めた。
男なんて口だけ上手い事を言ってその気にさせて、いざとなれば自分が一番大切なのだ。
ポセイドンが、それを教えてくれた。
あんなに愛し合っていたと思った日々も一瞬で崩れ去った。
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