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この学校は古い建物と五年前に立てた新しい建物が一つの敷地に混在しているので、古い校舎のほうは物置代わりとして使われている兆候があった。
聖世が美術工芸室にたどり着いた時、そこにはまだ誰も来ていなかったが、聖世はこの教室に張り巡らされている術の罠に、すぐに気が付いた。
そこまでは予想通りである。
あのアテナが何の準備もなく、聖世を呼び出すはずはない。
聖世は罠に触れないように美術工芸室をぐるぐる歩いて過去の記憶の欠片を探す。
この教室の過去の殆どが消されているのは分かっている。
しかし、アテナの使いはこう言った。
ここに来たら、聖世の探し人について教えてあげる、と。
つまり、どこかに隼人の居場所を示す何かの記憶なり思念なりが残っているかもしれない。
聖世は手をかざしながら部屋中を丁寧に探る。
「お待たせ、一年生は随分と終わるのが早いのね」
聖世は美術工芸室の入り口を振り返る。
そこには、アテナの招待状を渡した女子生徒が爽やかな笑顔を聖世に向けて立っていた。
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