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だが、それにしたって自分で親を選んで生まれてきたわけではないのだから、仕方ないではないか。
聖世の美貌は死んだ母親譲りだった。
当時、生まれたばかりの聖世に母親の記憶などないのだから、写真と聖世の両親の親友だった玲旺の両親の話でしか聞いた事はないが、とても綺麗な人だったらしい。
「それはそうね。あなたは転生したんだった」
思い出したように、あっさりと言ってのけた綾香に嫌味な感じはしない。
綾香は今まで関わってきたティタンの誰とも違っていた。
直感的に、このティタンは聖世と深く関わっている気がする。
聖世はこの者を知っている?
聖世の脳裏では、目まぐるしく神話時代、メドゥーサに関わった人物の顔が浮かんでは消えていった。
該当者がいない。
「そんなに私が誰だか気になる?分からないほうがいいわよ。多分、あなたが一番会いたくない人だから。勿論、彼にとってもね」
綾香の視線が美術工芸室の入り口に注がれている。
聖世は反射的に振り返った。
工芸室の入り口で玲旺が怒ったような表情を浮かべ仁王立ちしていた。
「玲旺!どうして!」
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