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部屋には一人の少女が、木製の椅子に座っていた。
窓からの月明りに照らされ、少女の顔は青白く光っている。
『メリークリスマス』
人形たちは一体ずつ呟いた。
月明りに反射し、人形たちの青色や緑色の瞳は、まるで光っているようにみえた。
母の手作りのあかいドレスを身に纏った少女は、窓枠に切り取られた夜空に光る、少し欠けた月を見上げて、小さな声で呟く。
「今年はみんながいてくれる。素敵なプレゼントをありがとう。サンタさん」
少女は「クリスマスプレゼントよ」と、人形たち一体ずつにキスをしていく。
すると、人形たちはゆっくりと動きだし、少女と手をつなぎ、静かなダンスをした。
少女も人形たちの顔も楽しそうで、すこし、悲しげな表情だった。
時計の短い針が、十二をさす頃。
少女は部屋の真ん中で一人、青い瞳を瞼に隠し、横たわっていた。
その姿は、まるで美しいフランス人形のようだった。
棚の上、ガラスの向こうの人形たち。
雲から顔を出した月が人形たちを照らし出すと、頬がうっすらと、濡れているように光っている。
床に横たわる、彼女の上にある小さなクリスマスカードには、こう書かれていた。
『メリークリスマス。あなたのサンタより』
小さくて可愛らしい、彼女の文字だった。
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