透明な夜空に咲く、翡翠

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凍てつく寒さの中、部屋の灯も暖房も入れずに巴月透華(はづき・とうか)は窓の前に立っていた   「もうこの世に存在しないのね、私の愛しい子は。このガラスの冷たさしか、あなたを思い出させる温もりなんてこの世に存在しないわ」   透華は直に窓ガラスに頬を押し付け、悲哀に満ちた声でそう囁くと、静かにカーテンを閉める そのままゆっくりと目を閉じて、小さな溜息を吐く   「…翡翠。何故、私よりも先に逝ってしまったの……?」   翡翠とは、透華が飼っていた烏だ 透華の唯一の愛すべき存在であり、友であり、理解者だった―――
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