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五年前の初冬
夕暮れ時、透華が自室の窓を閉めようとしたら一羽の白い烏が窓辺に降り立つ
追い払おうと透華が手を伸ばしかけると、数メートル先から別の烏がこちらへと向かって来ているのが見えた
白い烏は縋るように透華を見つめる
透華は半ば無意識に烏を抱き上げて、素早く窓を閉める
追って来ていた烏は透華の部屋の前の電線に一度停まったが、直ぐに居なくなった
『もう大丈夫よ、安心して』
自分の腕の中の烏に透華は優しくそう言うと、ベッドの備え付けのサイドテーブルにそっと降ろす
烏は大人しくして、愛らしい瞳を透華に向ける
『ここで一緒に暮らす?』
透華の問い掛けに、烏は頭を透華の手に摺り寄せる
どうやら異存は無いようだ
『そう、分かったわ。私は透華よ。貴方は…名前が無いと不便ね』
透華は自己紹介をして、烏の名前を考える
不意に勉強机に目をやると、掌サイズの翡翠の球体が透華の目に入る
『…そうね、翡翠。貴方の名前は翡翠よ。この翡翠の柔らかな輝きと貴方の瞳が、とても似ているもの』
透華はそう言いながら、翡翠に笑顔を向ける
翡翠は嬉しそうに透華を見つめる―――
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