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小学校に入学したころ、お父さんに『あいじん』ができました。
そのころのわたしは、それがどういう意味なのかよく分かっていませんでした。
ただ、お父さんが家にあんまり帰ってこなくなったことがさみしくて、「ねえ、どうして?」ってお母さんの服を引っ張っては困らせていました。
小学校を卒業するころ、わたしはすっかり家族に対してあきらめていました。
お母さんもいつの間にか別の男の人と付き合うようになっていたし、お父さんは形式上離婚していないだけで、完全に別の家の人になっていました。
わたしは、いつも本ばかり読んでいました。家でも教室でも、ひとりでいました。
中学校に入学したころ、わたしは人生をあきらめはじめていました。
いじめられてはいなかったけれど、友達もいなかったし、将来の夢だってなんにもなかったし、家に帰れば誰もいないのですから。
わたしは、ひとりぼっちでした。どうしていいかも分かりませんでした。
だから、わたしはクリスマスが嫌いでした。
いつだって、周りのことがうらやましくて仕方がありませんでしたが、クリスマスはとくにさみしくなりました。
どんなケーキを食べたとか、そういう話をきくたびにわたしは泣きたくなるのでした。
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