七年ごしの願いごと

『クリスマスに、サンタさんに何をお願いするの？』

　小学校低学年のとき、担任の先生にきかれたわたしは「お父さんが家に帰ってきてくれたらいいな！」と答えて困らせました。

　小学校高学年になっても、まだ「クリスマスくらいは、家族みんながそろってほしい」とひそかに思っていました。

　サンタクロースなんていないと知っても、もしかしたら、かなえてくれるかもしれないと。
　だから、ずっと、わたしはクリスマスが近づくたびに願っていたのです。

　家族ですごすクリスマスを、どうかかなえてください、と。

　けれど、今はもう違います。
　同じことをきかれたなら、わたしは「飢饉で苦しんでいる人たちにご飯をあげてください」とか「めぐまれない子どもたちを学校に行かせてあげたらいいのに」とでも答えるでしょう。

　サンタクロースなんて、まったく馬鹿らしい話でした。
　わたしはお腹をすかせていないし、学校にだって行けるのです。めぐまれているのです。
　そもそも、家族の仲がよくないなんて、世間にはよくある話なのです。

　毎年、クリスマスが来るたびに心にいだいていた願いごとを、わたしはついに捨てました。