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その日は、雪が降ってもおかしくないようなくもり空でした。
ホワイトクリスマスになるかも、とはしゃぐクラスメイトたちの声に、わたしはこっそり「雨になっちゃえ」と呟きました。
ゆううつな灰色の空さえ、クリスマスイブである今日には、すばらしくみえるのでしょう。
そんなおめでたいクラスメイトのことが、わたしは嫌いでした。
テレビや雑誌におどらされているだけなのに、馬鹿みたいだと思っていました。
「ゆきちゃん、一緒に帰らない?」
わたしが帰りじたくをしていると、隣の席の早苗ちゃんが声をかけてきました。
早苗ちゃんは、いつもにこにこしていて、誰にでも優しい女の子です。
わたしは、早苗ちゃんの笑顔をみるたびに『何が楽しくて笑っているんだろう』とひそかに思っていました。
「……わたし、ひとりで帰るから」
わたしが目をそむけると、早苗ちゃんの後ろにいた理子ちゃんと藍菜ちゃんが
「だからやめなって言ったのに~」
「早苗、早く遊び行こっ」
とわたしをにらんで言いました。
「そっか……無理にさそっちゃってごめんね! また今度ね!」
でも、早苗ちゃんはやっぱりにこにこと笑ってそう言うと、二人と一緒に教室を出て行くのでした。
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