聖なる夜の真実

31/31

54836人が本棚に入れています
本棚に追加
/670ページ
ゼロは黙ってステラを睨む。 ステラもまた、それから逃げずに睨み返す。 2人の間に緊張が走り、誰も動けなくなる。 そんな空気の中で、ゼロはつまらなそうに鼻を鳴らした。 「……まあいい。この先、お前たちが俺の障害になるとも思えんからな」 そう言って、ゼロは5人に背を向ける。 「……どこに行くつもりだ?」 カレルの問いに、背中で視線を感じながらゼロは答える。 「憎まれようとも、裏切り者と罵られようとも、俺は俺の目的を果たす。 もし、俺を追おうと思うのなら、その時は俺と殺しあう覚悟をしておくことだ」 そう言うと同時に、ゼロの体を光が包み、その光が消えた時にはそこにゼロの姿はなかった。 ゼロの消えた暗闇を呆然と見つめ、ステラはその場で泣き崩れる。 カレルは苛立ちを拳に乗せ、地面を殴り付けた。 「何がどうなってんだよ……!」 すると、アレスに治癒術をかけていたアイナが、肩で息をしながら言った。 「傷は何とか塞がりました。 ですが、血を流しすぎています。 早く病院に連れていかないと……」 その言葉を受け、カタリナが血まみれの手でアレスを抱き起こし、その背に負う。 「カレル先輩もステラも、気持ちは分かるけど後にして。 今はアレスのことの方が大事だよ」 カタリナの言葉に、カレルは頷いてステラを立ち上がらせ、体力の限界まで魔力を使ったアイナに肩を貸し、急ぎ病院へ向かう。 カレルたちが病院に着いた頃、聖誕祭は終わりを告げ、街は眠りについた。
/670ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54836人が本棚に入れています
本棚に追加