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ゼロは黙ってステラを睨む。
ステラもまた、それから逃げずに睨み返す。
2人の間に緊張が走り、誰も動けなくなる。
そんな空気の中で、ゼロはつまらなそうに鼻を鳴らした。
「……まあいい。この先、お前たちが俺の障害になるとも思えんからな」
そう言って、ゼロは5人に背を向ける。
「……どこに行くつもりだ?」
カレルの問いに、背中で視線を感じながらゼロは答える。
「憎まれようとも、裏切り者と罵られようとも、俺は俺の目的を果たす。
もし、俺を追おうと思うのなら、その時は俺と殺しあう覚悟をしておくことだ」
そう言うと同時に、ゼロの体を光が包み、その光が消えた時にはそこにゼロの姿はなかった。
ゼロの消えた暗闇を呆然と見つめ、ステラはその場で泣き崩れる。
カレルは苛立ちを拳に乗せ、地面を殴り付けた。
「何がどうなってんだよ……!」
すると、アレスに治癒術をかけていたアイナが、肩で息をしながら言った。
「傷は何とか塞がりました。
ですが、血を流しすぎています。
早く病院に連れていかないと……」
その言葉を受け、カタリナが血まみれの手でアレスを抱き起こし、その背に負う。
「カレル先輩もステラも、気持ちは分かるけど後にして。
今はアレスのことの方が大事だよ」
カタリナの言葉に、カレルは頷いてステラを立ち上がらせ、体力の限界まで魔力を使ったアイナに肩を貸し、急ぎ病院へ向かう。
カレルたちが病院に着いた頃、聖誕祭は終わりを告げ、街は眠りについた。
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