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ここは曽薙(ソウチ)という発展も退化もしていない平凡な街。
高校生の崎島凍宇弥はここで暮らしている。彼は明るく誰とでも仲良くなれる風だった。が、彼には友達がほとんどいなかった。
その原因は[彼と心を通わせた人は死ぬ]というものだった。しかし凍宇弥はそんなことは気にせず普通に生活している。
今日の凍宇弥はフンフンと鼻歌を口ずさんでいる。なぜなら今日は彼女の名香辻 美月(ナカツジ ミヅキ)と1日過ごすからだ。
集合場所は曽薙町のアーケード内のサクラ並木という店の前で……という訳だった。が、しかし時間の9時30分を過ぎようとしていた。
「やっべぇ…余裕こきすぎた。また遅刻しちまう」
アーケードの目の前の交差点で時計をチラッと見て凍宇弥は焦っていた。その時信号が変わり反対側から駆けてくる姿が見えた。それこそが名香辻 美月であった。飛び抜けて美人でもなく少し可愛らしい少女だった。
凍宇弥に気付いたようで手を振りながら駆けてきた。凍宇弥もそれに答えて手を振り返そうとポケットに突っ込んでいた手を挙げようとした。
右の方からキキィィィっというタイヤのスリップ音が聞こえたが人々のざわめきで掻き消された。凍宇弥は瞬きの後彼女を見失った。
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