君にだけ

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   俺は、使い古された言葉じゃなくて、違う言葉で言いたいのに。 悩んでゴロゴロする俺を、彼女は微笑んでみていた。 可愛い。  「私は、そうやって月島が悩んでくれてるのが嬉しい」 そう温かく微笑んで、俺の髪に触れる。 でもさ、俺は陽菜に言いたいんだよ。 俺の言葉で、俺の気持ちを。 昔の人が作り出した言葉じゃなくて、俺の言葉で。  「わからなくもない。だけど、私は、こうして口にしている言葉は全て私の言葉だと思う」 だから、と陽菜は続けた。  「私が、月島に好きと言ったら、それは私の言葉だ」 まっすぐ、寝ころぶ俺を見つめるきれいな瞳。 ほっぺたが少し赤い。 陽菜、照れてる? 難しいことは、よくわかんない。 でも、俺が気持ちを言葉にしたら、それは俺の言葉なんでしょ? そう言えば、陽菜がこくりと頷いた。  「陽菜、好きだよ」 俺の髪を撫でる指先を、やんわりと握りしめる。 あったかくて、柔らかい指先。 握ったまま、俺の口元に引き寄せてキスをする。 ぴくりと陽菜の肩が跳ねる。 可愛い。     ねぇ、俺さ陽菜と出逢ったの運命だと思うんだよね。 だって、陽菜には太陽。俺には月。 月は太陽無しじゃ輝けないんでしょ? だったら、陽菜との出逢いは運命なんだよ。こうしてそばにいるのも、俺たちが正反対なのも。   ねぇ陽菜、大好きだよ。 愛してる。   たくさんの人が囁いた言葉でも、俺は陽菜だけに繰り返す。 それは俺の言葉で、俺の気持ちだから。  そっと陽菜の頬を撫でて、引き寄せる。 長い髪が、俺の顔にかかる。 細くてくすぐったい。  陽菜の頬が熱い。 それがどうにも可愛くって、嬉しくて俺は笑った。 軽く陽菜に小突かれたけど、痛くない。  「陽菜」 名前を呼んで、そっと口付ける。 陽菜といる、過去と今とこれからが、俺は愛しい。 そばにいるだけで、心地よいシアワセ。
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