86への鎮魂歌

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  「待て!」 声が聞こえ車を止める 「忘れてた忘れてた、これは俺の考えでは無いんだが丁度いいと思ってな、ついて来てくれ」 店の裏には綺麗なバイパーがあった 「やっぱりアメ車は迫力がありますね。 このバイパーがどうかしたんですか?」 車好きの共通の癖だろうか、小早川は色々な角度からバイパーを見回しながら尋ねた 「あのグシャグシャのボディを起こせる人間がいて、変わり者でな。 顔合わせ兼ねて試験をしたいそうで、内容はバイパー乗って地図の所まで来い。 だそうだ」 地図は他県を示してはいるが、車で行けばそう遠くはない所だ 「そんなんでいいんですか?」 とたんにオッサンは困った顔をした 「このバイパー俺も興味あって乗って見たらさ、俺には運転できなかった こんな足回りでコンピューター1つ入れてない チョンとアクセル踏んだだけでぐるぐる回っちまったよ……」 確かに他のチューニングカーの残したスリップ痕だと思っていたものはよく見ると、バイパーのリアタイヤに続き、二転三転していた 「死んじゃいますよ! こんな極端なハイパワーマシン、何百万かかった良いものでも棺桶でしょう!?」 変わり者って言っても程がある 狙いは分かる ハイパワーマシンにおけるアクセルワークを試したいのだろう 「言った通り変わり者なんだ、悪い奴では決してないがな 無駄に……職人気質というかな………… 無傷で行けばそりゃあもういいボディになるだろう」 あそこまでダメージを受けた車を起こせる人間の難題 小早川の燻っていたプライドに一気に火がついた 「上等!行ってきます」 乗り込みアクセルを踏む チョンと踏んだつもりだったが激しくホイルスピン! 「これで法定速度…… いや、サーキットでも無理があるだろ」 だが ここで諦める訳にはいかない 全ては銀座のリベンジをするために 首都高に舞い戻るべく
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