86への鎮魂歌

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「集中しろ…アクセルワークを支配するんだ…」 アクセル開度を微妙に調整 かのアイルトン・セナは40段階以上ものアクセル開度を踏み分けたという 小早川に当然そんな境地に到達するわけもないが着実に並以上のアクセルワークを身につける 「(事故る、事故らないよりも、アクセルワークに集中する これだけで、バイパーのエンジンがわかっていく……!)」 今まで86という低排気量車のアクセルワークの域を飛び越えた瞬間だった 無事ボディー技師の元に着く 最早特筆することもない 廃倉庫のような場所だった 「本当にここなのか……?」 店の半開きのシャッターから女の人が出てきた なかなかの美人 綺麗な長い髪が揺れる清楚系の女性だ 異性より断然車な小早川でさえも目を引かれた しかし5秒後 理想は音を立てて崩れ去る 「あぁ、今ウチはボディは……って、えぇ!!? バイパー………まさかあんた…… あのバイパーを無傷で!?」 「ええ、そうですけど」 女性はバイパーの擦りやすい四隅等を見回し、こちらを凝視した 「(なんだこの視線は……)」 「いやぁ、私もビックリ 下手したら殺したかと………いや、なんでもない」 とたんに小早川は背筋がゾクッときた 「(は? 今、何て言った? 『殺したかと』?)」 脳内は錯乱 身体は硬直 「さっすが悟の弟! 才能があるんかね、やっぱり」 「兄を知ってるんですか?」 はっとした女性 「あ、自己紹介忘れてた 私、春川 美香 よろしく」 話の流れが掴めなかったが、もうこの春川という人の空気に完全に流された小早川も自己紹介をする 「小早川 哲 用件はその感じだときいてると思います」 「うん、バッチリ聞いてる とりあえず中入って」 小早川は案内されるがまま廃墟ライクな倉庫へ入った
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