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楽しい時間は流れるのが早いもので、もう帰らなければいけない時間になってしまった。
泰都は私を送っていってくれるらしいから甘える事にした。
一秒でも長く一緒にいたい。今の私の頭の中にはそれだけが過っている。
もしかしてこれが噂に聞く恋の病?……
『……』
無言でいる事が勿体無いと分かっているのに、掛ける言葉が見つからない。
泰都も無言で、ただ下を向き何かを考えている様子が見て取れる。
……私と同じで淋しい?のかな。
『由希?』
名前を呼ばれ泰都の方を向く。
泰都は、私にゆっくりと顔を近付けてくる。
キス?だよね……泰都も淋しいのかな?
私は恥ずかしかったけど受け入れるように目を瞑った。
そして、
口付けを交わした。
泰都の唇から、何故か思いが伝わって来る様で……それだけで優しくなれるような気さえした。
互いの唇を離してから流れる沈黙。今話し掛けられてもロクな対応出来ない!!多分今の私は所謂ゆでダコ状態です。うー! 恥ずかしい! 恥ずかしい!
『じゃ……じゃあね♪』
恐らく突発的に出てきたであろう言葉を吐き捨てる様に放ち、私は家へと駆け込んだ。さっきの一秒でも長くいたいと思っていた私は一体どこへ行ったのだろうか……。
『おかえり。遅かったじゃない……顔紅いけどどうしたの? まさかお酒でも飲まされたの?』
玄関ではお母さんが待っていた。
さて、どう言い訳したら良いものやら……
『さ、寒かったからだよ!!』
『あ、コラ!! 待ちなさーい』
お母さんをなんとか言い包めて(?)、私は自分の部屋へと駆け込んだ。
先ずは泰都に楽しかったよメール送らないと……
『ピッピッと!』
そーしんかんりょーう♪
―ピロリロ
送ってから数分と立たない内に泰都から返信が届く。
「俺も楽しかったよ♪」
私は泰都に何かして上げただろうか。泰都にしてもらってばっかりだった気が……
『うぅ……』
今更考えても仕方ないよね……よし! お風呂入ってこよ。
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