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少年が蒼さんを連れてこちらに歩いてきた。
「君が秀明だね。私は時人。以後お見知りおきを」
「はぁ」
「はぁ、じゃない。しゃんと挨拶しろ」
「良いんだよ、蒼。そんなことで目くじらをたてなさるな」
「だがな…」
不思議な感じで、俺は蒼さんを見たが、視線を子供に向けると目があった瞬間にっこりと微笑まれてしまった。
「何で大の大人がこんな子供に敬語を使ってるかって?クスクス」
俺は自分の考えを気づかないうちに言葉にしてしまったのかと思い慌てた。
「時人はこれでも大僧侶の地位に当たる方だ」
「大僧侶?」
「つまり、この比叡山で一番エラ~イお坊さんって事」
「え~!!この子供が!?」
「だから失礼だっての」
「蒼。彼がそう思うのも無理はないのですよ。それに私はまだ十に成ったばかりだ、仕方のないこと。秀明、気にする事はありませんよ。あなたの友人と思って接してもらってかまいませんから。さっ、先へ参りましょう」
そう言って、時人は歩き出した。
俺は驚きのあまり口がふさがらないまま、先へと歩かされた。
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