[思念]

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「中に入るにあたっていくつか注意が要ります」  俺はあまりに真剣な面もちでこちらを見て話す時人の言葉に、思わずつばを飲み込んだ 「一つ目は、中には必ず一人ずつしか入れません。次に中へ入ったら、正面の墨絵に一礼し膝を着きもう一度礼をします。そしてロウソクを消し絵があった方へ置いて、さらにその方向へ頭を向けて、仰向けで横になってください。そしてゆっくり目を閉じ眠りについてください」 「なんだなかでねむるだけか…」 「そんな単純なもんじゃない」 「えっ」 蒼さんからボソッとはなたれた言葉にひやりと嫌な汗が流れた。 「そう、肝心なのはここからです。ここは、私達比叡山高位の修行僧でもめったに訪れる事のない修行地です」 「えっ…」 「それだけここは危険だという事だ」 「はい。中は広くない四方の畳部屋で、正面の壁に阿修羅神の墨絵があるだけなのですが…」 緊張の糸がピッと張った。
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