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「有るだけなのですが…一度中に入り戸を閉めると灯りはもって入ったロウソクのみ。外からの声などはドアを叩いた時の振動だけ。つまり中は、完全隔離された異質空間になります」
空気がどんどん重くなっていく。
「それは、体験した者だけが分かる苦しみに値するそうですが、何より必要なことは自分が何者でどこに帰るべきかということ。後は…今夜の内には戸を叩きます大丈夫でしょう。ですが、精神は自分で保ってください」
「そんな事言われたら…」
「後はお前が決めろ」
蒼さんは何故俺をこんな事のためにわざわざ連れてきたのだろう…内心は今直ぐ帰りたい。でも…
「入ります」
少し震えた拳を握りしめて俺は答えた。
「確かに今めちゃくちゃ恐い。でも蒼さんが俺をここまでつれてきた理由が中に有るなら…俺は自分の目で確かめたい」
「そうですか、ではどうぞ」
そう言いきって開かれた戸をくぐり、俺は時人に渡されたロウソクを持って中へと入った。
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