[記憶]

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[記憶]

声をかけられ、そちらに顔を向けると兄貴が袴姿の仁王立ちでこちらを見ている。 「秀…」 と一言声かけたら 《ばち~ん…》 思いっきりひっぱたかれた。 俺は声も出ず、ただ痛みと寒さに耐え涙だけがながれおちていた。すると今度はすっと手を差し伸べられた。 「帰るよ」 兄貴のそのひとことで 立ち上がろうとしたが立てない。 すると兄貴は俺の姿を見るとかがんで、自分が着ていた羽織りを俺に着せ、タビまで移し履かせてくれた。そうしてから優しく俺をおぶってくれた。
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