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マスターが学生にコーヒーを出した。それをゆっくりとすすり始めると、熱いとも苦いとも言えていないような言葉が聞こえたが、俺は何とか判らない程度で笑いをおさえた。
その後も少しその学生を何気なく観察していたが、明らかにムリをしてコーヒーをすすっている。
「マスター。hotミルクココアを」
そのやり取りを聞いていた学生は何やら財布の中を確認してガックリしていた。
その様子を見てなんとなく気づき、ココアを入れ終えたマスターを確認して話した。
「すいません、やっぱりココア止めてください」
「かしこまりました」
その言葉を少し悔しそうに聞いていた学生に俺は
「良かったら、変わりにココア飲んで頂けませんか?」
「えっ」
学生はビックリしてこちらをみている。だから俺は、ココアを棄て様としていたマスターにストップをかけた。
「マスター棄てるの待って。もちろん俺のおごりなんで。どうですか?」
「それじゃあ…いただきます」
「良かった」
「どうぞ」
マスターにすっと出されたココアは、とてもミルクが入っていてココアの甘いなんとも言えない香りが辺りに漂った。
それを学生は、さっきのコーヒーとは違ってとても美味しそうに飲み始めた。
「マスター、俺にはさっきと同じものを」
「はい」
そして直ぐ出されたコーヒーは、少しだけ冷めていた。
でも、マスターに感謝しつつそのコーヒーを美味しく飲みきった。
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