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車の中、秀明はぐっすりと眠っていた。だが怒ったり苦しがったりでも笑ったりといそがしかった。
「何の夢をみてるんだろうな」
「そうですね」
木崎と微笑ましくその姿を見た。
「良い夢だといいな」
その時、秀明が見ていた夢はというと…
昔の夢を見ていた。
それは、昔に家で一度だけやったバースデイパーティー。家族みんなで俺達の誕生日を祝った時の思い出だった。
家の中では皆がバタバタして準備をしている。そして何故か双子の兄だった秀が病院服で、他の人達はみんな、変てこりんな格好をしている。
だが始めはとても楽しく過ごしていたんだ。
しかし、気づけば俺は裸足で外にいて雪の上、木に寄りかかって膝を抱えている。そしてグズグズと泣いているんだ。
そこに兄貴がやって来て
「秀明…帰るぞ!」
それだけ言って、俺をおぶって家まで帰ってくれた。…そんな夢だった。
心地よい揺れが止まった。信号で車が止まったからだ。
俺はゆっくりと目を開けたが、さっきまで居たカフェではない事に驚いていた。すると…
「目が覚めたかい?」
「あなたはさっきの」
「あまりに気持ちよさそうに眠っていたから。まぁ、もう起こそうと思ってたんだけどな。家はこの辺で良いのか?」
「えっ?」
俺は窓の外を見ると、いつも通る家への景色が映っていた。
「なんで…」
「違うのか?」
「いえ、あってます」
「そうか」
「えっ、でもなんで俺の家の方向が…」
「ちょっとな。…それにこの辺で佐波って言ったらあの家しか思い浮かばない」
「そうなんですか?でも、もうここでいいです」
「なぜ」
「家には…」
「帰りたくない…か」
「はい」
「まぁ、そうは言わず…もう着く。だから今日は帰りなさい」
「だけど」
「君にも確かに言い分はある。でも…考え直す事もあるんじゃないのか?」
「それはそうだけど…」
すると、家に着き車が止まった。
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