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運転手が外から後ろの座席ドアを開けた。
「どうぞ」
「さっ、降りたまえ」
俺が渋々車を降りかけると
「あぁ、そう言えば自己紹介がまだだったな」
「えっ」
「君の名前は聞いたのに、失礼した。俺は蒼だ。君の事は秀明と呼ばせてもらう。俺も蒼でかまわん。何かあったらここに連絡してこい。時間があれば聞いてやる」
そう言って、名刺を渡された…が名前が違う。
「えっ、これ名前」
「気にするな。それも俺の名だが、君は蒼と呼べ」
「はぁ」
訳が分からず言われた。そして車のドアが閉められる。すると窓が下へと下がる。
「そういえば誰かがこんな事を言っていたな。君はもう少しバカに成った方がいいと」
「はぁ?」
「まぁ、分からなくもないがな」
「どういうことですか」
「言葉通りの意味だ。さっ、もう行かなくては」
「ありがとうございました」
「一つ言い忘れていた」
「なんですか?」
「君がそうやって敬語で話していると、本当に秀そっくりだな」
「えっ!!」
「 Bye , another clown 」
「ちょっと、蒼さん!!どお言うことですか!?なぜ秀を!兄貴を知っ…」
車の窓が閉まってゆく。そのまま蒼さんは手をひらひらと振っていて、車は走り去ってしまった。
【蒼さんはいったい…なんで兄貴を…】
俺は、少しの間一枚の名刺を握ったまま車の走り去っていった方を見つめ続けた。
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