1984年

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今から約30年前、世界一の天才と謳われた男性はある問題にぶつかっていた。 彼の名前はムリア・アデナウア-、25歳のドイツ人だ。 ムリアは世界中の秀才が集まるハーバード大学をわずか15歳で卒業した超天才。 現在は日本語、中国語、英語など、世界の語学を始め、生物学や天文学、世界の歴史、地理など、ほぼ全ての教科を暗記した歴史上唯一の天才だと、ドイツ中で謳われた青年であった。 そんな天才の彼は、23歳の時にずっと胸の内に秘めていた思想を口にした。 「世界中の学問はほぼ全て暗記した。しかし、それは全て誰かが研究し、考えて書に記した物。私は誰かが考えた事を暗記する事はもううんざりだ。私は誰も考えようともしなかった事を研究し、未来に残したい。」 と。 それを聞いた人々は賛成し、応援したが、後に彼が研究し始めた事はあまりにも馬鹿馬鹿しかった為、人々は反対したのだ。 それは『サンタクロース』の研究だった。 ムリアは何故サンタクロースを研究しようと考えたのか、一人の新聞記者が聞いてみた事があった。 返ってきた答えは意外にも納得できる動機だったのだ。 その答えとは、 「子供は皆サンタを信じているが、疑問が多いだろう?子供は皆その疑問を身近の大人に聞くが、大人は皆困り、『トナカイを連れている赤い服を着たお爺ちゃんだよ。』とか『プレゼントを持ってきてくれる人だよ。』とかどれもこれも適当に思いついただけの言い訳を言うだけだ。それでもし本当にサンタクロースがいたとしたらあまりにも可哀相ではないか。だから私はサンタの為にも大人の為にも研究したいのだ。」 だった。 その新聞記者は「サンタなどいる訳がない。時間の無駄だからやめろ」と訴えたのだが、彼の思いはとても深く、聞く耳すら持たなかったのだ。
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