はじまり はじまり

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倫子は書類に必要事項を記入し女へ渡してから社をあとにした。 倫子(今から帰るには少し早いなー。ちょっと買い物でもして行こう) 4年前に母を無くし天涯孤独となった倫子は地元の出版会社で働いていた。 しかし、地元で一人寂しく生きていくよりは人が溢れる都会で生きた方が楽しいと思い先週この東京に越してきた。 倫子はぶらぶらと歩き服や靴を見たり、途中小さな喫茶店で軽く食事を済ませたりしていた。 倫子(今から電車に乗って、夕飯の材料を買ってから帰ればちょうどいいかな。今夜は何にしよー?) 倫子は夕飯のメニューを考えながら駅へ向かった。 小さい頃、倫子は人混みが大嫌いだった。いろんな人の混ざった臭いや手話で話している倫子への視線。それにちょっと気を抜くと人にぶつかったりしたからだ。 そのため倫子は家にいる事が多く、気が付けば自分のように障害を持っている人の役に立ちたいと思い点字の勉強を一日中していた。 だが成長するにつれ今では人混みも克服し良く出かけるようになった。それに何年か前にやった耳が聞こえない人の恋愛ドラマやドキュメンタリーのお陰で周りの偏見も少なくなった。 だから今の倫子は耳が聞こえない事を除けば健常者と何一つ変わらないのだ。 倫子は会社から電車で一駅の所に部屋を借りている。 越してきて2・3日は足の踏み場もないほど物で溢れていたが、今ではすっかり片づいている。 倫子(よし、グラタンにしよう。さっきの喫茶店で食べたかったけどそんなにお腹空いてなくてサンドイッチしか食べれなかったからなー)
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