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ケーキは美味しい。
本当ならそれは幸せな事だが。
彼に裏切られたショックが大きすぎた。
正の感情×負の感情は、より深い負の感情を産み出す。
「うっ、うっ、うっ…
何でよぉ…
なんでこんなに不幸になるの…?
うっううぅ…」
堪えていた感情がピークを越え、涙が溢れ出した。
「サトシさん、何で裏切るのよぉ…
先月は、泥棒に入られたし、その前はひったくりにバッグ盗られるしっ!
ぅわぁぁぁ……!」
打ちひしがれた心を過去の不幸が追い討ちをかける。
幸枝はもう子供のように泣きじゃくるしか出来なかった。
しかし、哀しいかな、このアパートの壁の厚さは紙のように薄っぺらだった。
隣の部屋の心無い住人が、壁をドンドン!と叩いてくる。
泣き声がうるさいという、無言ながらトゲのこもった意思表示だった。
その敵意むき出しの音にビクッと体をすくめスミマセンと唱え、泣きたい気持ちを無理やり押さえ込んだ。
「…声を上げて泣くことも出来ないなんて…不幸すぎるよ…」
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