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保は、やっぱり私を連れては行かなかった。
出発の日も、行ってしまう国も教えてはくれなかった。
書き置きだけが、美咲の唯一の心の支えになった。
『美咲へ。
泣いている美咲を見るのは嫌だから、何も言わないで行きます。
俺は、美咲が大好きだったよ。
もちろん、今でもね。
美咲のことが好きだからこそ、連れていけなかった。
美咲がこれから自分で掴む幸せを、俺が奪ってしまうのは…そんなの、本当の愛じゃない。
…もし。
もしも、美咲が、この先も俺を想い続けてくれたら、2年後のクリスマスイブに…あのモミの樹の下で逢いましょう。
俺たちが出会った広場に飾られる、あのツリー。
美咲は毎年見たがったけど、結局一度も見れなかったから。
俺は、必ず行きます。
保より』
今年が、約束の年。
美咲は、保の残した書き置きを何度も読み返した。
…保。
私、今でも保が、好き。
必ず、行くからね?
明日は、クリスマスイブ。
雨が小雨になるころ、美咲は眠りについた。
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