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サヨナラの日に
AM5:37
『眠れねぇ…』
布団に横になって目を閉じても、どうしても眠る事ができなかった。
理由はわかってる。
あいつがいなくなるからだ
あいつの親の転勤が決まったのは、一月前。
『覚悟してたつもりだったんだけどな…』
我ながら女々しくてイヤになった。
連絡が取れないわけじゃないし、携帯だってある。
ただ…会えなくなるだけだ。
ひと月の間、そう自分に言い聞かせてきたのに…。
幼なじみに会えなくなるだけで、眠れなくなる自分に嫌気がさした。
『…アホらし』
俺は頭にすっぽりと布団を被せると、そんな考えを吹き飛ばす為に寝ることに集中し始めた。
……カンッ。
不意に音がした。
俺は布団から顔を出し、周りを見回す。
『なにか落ちたのかな…』
暗いし、明日でいいや。と俺が布団に戻ろうとした時、再び
…カンッ
という音。
どうやら、窓ガラスになにかが当たっているらしい。
『何だ?…こんな時間にガキみたいなイタズラかよ…』
ぶつくさ言いながらカーテンを開ける。
その瞬間、俺は息をのんだ。
まだ薄暗い路地に、街灯の明かりに照らされて、
あいつが立っていた
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