サヨナラの日に

1/2
前へ
/19ページ
次へ

サヨナラの日に

AM5:37   『眠れねぇ…』   布団に横になって目を閉じても、どうしても眠る事ができなかった。   理由はわかってる。  あいつがいなくなるからだ   あいつの親の転勤が決まったのは、一月前。   『覚悟してたつもりだったんだけどな…』   我ながら女々しくてイヤになった。   連絡が取れないわけじゃないし、携帯だってある。 ただ…会えなくなるだけだ。 ひと月の間、そう自分に言い聞かせてきたのに…。   幼なじみに会えなくなるだけで、眠れなくなる自分に嫌気がさした。 『…アホらし』   俺は頭にすっぽりと布団を被せると、そんな考えを吹き飛ばす為に寝ることに集中し始めた。   ……カンッ。   不意に音がした。 俺は布団から顔を出し、周りを見回す。  『なにか落ちたのかな…』   暗いし、明日でいいや。と俺が布団に戻ろうとした時、再び   …カンッ   という音。 どうやら、窓ガラスになにかが当たっているらしい。   『何だ?…こんな時間にガキみたいなイタズラかよ…』   ぶつくさ言いながらカーテンを開ける。  その瞬間、俺は息をのんだ。   まだ薄暗い路地に、街灯の明かりに照らされて、 あいつが立っていた
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加