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校舎の影に隠れて村崎亜紀が出てくるのを待つ。
車を置いていくのなら、徒歩で帰る可能性が高い。
タクシーを呼ばれるとお手上げだが、待ったかいがあって村崎亜紀がロングコートを羽織って出てきた。
「よ~し、尾行開始~」
普通に話をしても村崎亜紀に聞こえる距離ではないのだが、何故か小声になる赤坂真奈美。
緑川優子が頷き、赤坂真奈美の後に続く。
「駅に向かってるみたい。村崎先生が電車なんて似合わないなぁ」
真っ赤な高級外車で学校に通勤している姿しか見たことのない二人は、驚いた様子で村崎亜紀を尾行していく。
「…電車だったら人混みに紛れることができるね」
やましいことをやっているせいか、人目が気になる緑川優子だった。
駅に着くと都心環状線に乗り込む。
夕方のラッシュで人の量は半端じゃなかったが、村崎亜紀を見失うことはなかった。
都庁のある駅に着くと村崎亜紀が降りた。
慌てて赤坂真奈美と緑川優子も下車する。
村崎亜紀は颯爽とした足取りで、少しでも気を抜くと置いていかれそうになった。
村崎亜紀が向かった場所は駅にほど近い、有名な会員制の超高級ホテルだった。
『ロイヤルスイートホテル』
会員でないと宿泊どころか、立ち入ることすらできないホテルだ。
何故か、政財界や芸能界のスキャンダルがよく発覚することで有名で、ホテルの敷地の外では、某雑誌のカメラマンが隠れているという噂まであった。
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