Re;S

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  俺の目の前に飛び込んできたのは、まだ幼さが残る少年の顔だった。 「大丈夫? おじさん」 おじさん? 俺の事か? 失礼なガキだな。 まだ、おじさんと呼ばれるような年じゃねーよ。 でも、良かった。 ケガはなさそうだ。 無事で何よりじゃねーか。 「おい、あんた大丈夫かね?」 頭の禿げ上がった中年が俺に手を差し伸べてきた。 俺はその手を無視して、自力で立ち上がる。 こいつみたいなのを『おじさん』と言うんだ。 分かったか? クソガキめ。 俺は身体に付いた埃を払い落とした。 高いスーツが台無しだ。 こんなガキを助けた為に。 「驚いたよ。いきなり路上に飛び出すんだから。自殺でもするつもりだったのかね?」 中年が興奮した感じで話しかけてくる。 「何があったのか知らんが、自殺はいかん。生きていれば…」 はぁ? 何言ってんだ、こいつは。来てんのは髪の毛だけじゃないみたいだな。 気の毒なこった。 「んな事より、そのガキの親はどこだ? スーツを弁償してもらわねーとな」 俺は周囲を見回した。 こういうのが銭を生む種になるんだ。利用しない手はない。 「ガキ? 何を言っとるんだね。 頭を強く打ったみたいだな。救急車を呼んであげよう」 黙れ禿げ。 野次馬が増えてきやがった。 仕事がやりづらくなるじゃねーか。 俺は違和感に気付いた。 さっきのガキは、俺の横で俺を興味深そうに見上げている。 しかし、野次馬の連中も禿げのおっさんも、このガキを気にも止めてねー。 どういうことだ? ガキと目が合った。 ガキが嬉しそうに笑った。 「おじさん、僕が見えてるんだね?」
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