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蛇に睨まれた蛙の気持ちが分かる人間がいるとするなら、赤坂真奈美と緑川優子が正にそれだろう。
恐る恐る顔を上げると、見慣れた顔があった。
「村崎先生…」
赤坂真奈美と緑川優子は、持てる知識と知恵をフルに働かせて、この窮地を乗り切る策を考えていた。
結論…。
「えへっ、奇遇ですね~、こんな場所で会うなんて~」
「先生のその服…すごい素敵です」
『笑ってごまかせ作戦』と『誉め殺し作戦』である。
二人とも、こんな作戦が村崎亜紀に通じるとは微塵も思っていない。
しかし、他にどんな方法があるというのだろう。
「…つけてきたわね?」
村崎亜紀の眼光が鋭く光る。
それだけで赤坂真奈美と緑川優子はすくみ上がりそうになった。
半泣きの状態でうつむく。
「まぁまぁ、亜紀のことを心配してついてきたのよ。あまり怒らないで」
山吹千尋が間に入る。
その優しい笑顔は世のおじ様だけでなく、赤坂真奈美と緑川優子のハートもがっちり掴んだ。
「甘い。そんなケーキにシロップをかけたような教育は、この子達の為にならないわ」
一刀両断とはこのことだろう。
山吹千尋の仲裁虚しく、村崎亜紀は二人の前に立ちはだかり、指をポキポキと鳴らした。
その迫力たるや、ジャンヌダルクも真っ青である。
赤坂真奈美と緑川優子は堅く目をつぶり、歯をくいしばった。
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