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小金井カウンセラーは繁華街の一角にあった。
見るからに胡散臭そうな店だ。十字架と仏像が一緒に置いてたりする。
霊媒師に宗教の壁というものは存在しないらしい。
祐太が物珍しそうに辺りを見回している。
店の中には何人か人がいたが、誰も祐太が見えないようだ。
店員なのか、怪しげな服を着た男が近づいてきた。
「いらっしゃいませ。ご希望のコースはございますか?」
コース? 何だそりゃ?
「霊視から始まり、除霊まで行うプラチナコースから、リーズナブルなエコノミーコースまで幅広く取り揃えております」
金取るのか…。
まぁ、タダじゃないとは思っていたが…。
「エコノミーコースてのは?」
「先生が霊力を込めて作った、特別製の御守りにございます。1500円になります。他にも壺や掛け軸もございますよ」
…そんな商売あったな。
「霊視コースはないのか?」
「ございます。お受けになりますか?」
「あぁ、頼む」
奥へと消える店員。
祐太を見ると、好奇心で目を輝かせている。
やれやれ…こりゃハズレだな。
店の奥に通されると、そこにいたのは小金井無道と名乗る、顔のデカい坊さんだった。
「うむ、そこにかけたまえ」
デカいのは顔だけじゃない。
態度も相当デカい。
「わしには全て見えておる。悪霊に憑かれたな」
そのとおり!
この坊さん、なかなかやる。
「見える、見えるぞぉ! 老婆がお主の肩に乗っておる」
…老婆?
俺は祐太を見る。
祐太は自分を指差し、キョトンとした顔で俺を見た。
口が『老婆?』という形に動いた。
「祓わねば、お主は地獄へと落ちるであろう。祓うか?」
「けっこうだ」
俺は椅子を蹴って立ち上がるとそのまま店を出た。
後ろで何か喚いていたが、関係ない。
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