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祐太の仏壇。
不思議な感覚だ。
祐太は本当に死んでいるんだと実感する。
お菓子が供えてある。
祐太の好きだったお菓子か?
「祐太は…他に何か言ってましたか?」
「えぇ。ジャイアンツの四番になりたかったと」
それを聞いて、祐太の母親が少しだけ笑った。
「あの子はジャイアンツしか知らないのですよ」
…それなのにタイガースを全否定したのか。
あのガキ…。
「祐太は今も近くに…?」
「えぇ、でも家に行くのは嫌だと…」
「そうですか…」
「これは俺の勘なんですが、祐太は、母親に愛されているのか不安に思っています。おそらくそれが、祐太を縛りつけている原因だと思うのですが…」
「そんな…」
母親にしてみればショックな事なのかもしれない。
自分の子供に愛情が届いていないというのは。
この人は、昼も夜も働いていたんだろう。
祐太の為に。
部屋を見れば分かる。
最新のゲーム機やおもちゃ。
外にあった自転車だって、安く買えるものではない。
祐太が寂しくないように、精一杯の愛情を注いできた結果だ。
しかし、それは祐太には分からなかった。
幼い子供にとっては、どんな高価なおもちゃより母親と一緒にいる時間が何よりも大切なんだろう。
玄関を見ると、祐太が隠れるように立っていた。
俺と目が合い、慌てて物陰に引っ込む。
…まる見えだぞ。
「祐太に貴女の気持ちを伝えてあげてください。この家の中にいますから。俺は外に出ています」
俺はそう言うと、隠れている祐太の脇を通り抜け、外に出た。
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