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  外で煙草をふかしていると、祐太がうつむいて出てきた。 俺を見て一言。 「煙草は身体に悪いんだよ」 「知ってるよ。どうだった?」 俺の顔を見上げる祐太。 目には涙が溜まっていて、決壊寸前だ。 「僕…もう行かなきゃ。おじさんからママに伝えてくれる?」 「あぁ、何だ?」 「あのね…」 祐太が声を潜める。 それを聞いて、思わず笑みがこぼれた。 「分かった。必ず伝えるよ」 「おじさん、ありがとう」 「おじさんはやめろって」 風が吹いた。 優しく柔らかい風だ。 風が止むと、祐太の姿はどこにも見当たらなかった。 …やれやれ。 手のかかるガキだ。 玄関の扉が開いて、祐太の母親が出てきた。 「祐太? 今、祐太の声が…」 「行ったみたいですよ。伝言を預かってます」 俺は、祐太の言葉を伝えた。 「お菓子は、チョコ味の方がいいと」 …祐太の奴、供え物のお菓子にケチをつけるとはね。 やっぱ、ガキだわ…。 それを聞いた、祐太の母親が笑った。 目には涙を浮かべてはいるが、悲しみの色はなかった。 俺は、『きっと大丈夫なんだ』と感じた。 突然、背中に走る痛み。 立っていられない。 祐太の母親が、心配そうに駆け寄ってきた。 「大丈夫ですか!?」 大丈夫ではない。 しかし、痛みで言葉が出てこない。 「救急車を呼んできますから」 そう言って、祐太の母親が慌てて家に戻った。 その後ろ姿を見つめながら、俺の意識は次第に遠のいていった。
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