クリスマスとミルクティー

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「……はあ―――」 吐いた息は白く曇り、冷たい黒の中に染み込んでいった。 私は首に巻いた白いマフラーを口元まで引き上げ、うつ向くようにして歩く。 茶色いロングコートのおかげで、体自体はとても温かい。 ―――どん――― 「おっと、失礼」 前をよく見ていなかった私は、初老の、英国紳士のようなおじいさんとぶつかってしまった。 「あ、いえ。……こちらこそ、すいません」 私はペコリと頭を下げて謝る。 「メリークリスマス」 おじいさんはにっこりと和かい笑みを浮かべて言った。 「はい。……メリー……クリスマス」 私の返答に、おや?と首を傾げるおじいさん。 「……あまり、楽しそうじゃありませんね……。一人ですか?」 「は?あ、はい。……そう、ですけど」 うつ向きながら言う私に、それはいけませんねと、おじいさん。 「どうです?このあと予定が無いのであれば、一緒にお茶でも?」 「ええ!?」 私はつい、大きな声を出してしまう。 自分が大きな声を出したと気付いて恥ずかしくなった私は、またもやうつ向く。 ……どういうつもりなんだろう?
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