15人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「……はあ―――」
吐いた息は白く曇り、冷たい黒の中に染み込んでいった。
私は首に巻いた白いマフラーを口元まで引き上げ、うつ向くようにして歩く。
茶色いロングコートのおかげで、体自体はとても温かい。
―――どん―――
「おっと、失礼」
前をよく見ていなかった私は、初老の、英国紳士のようなおじいさんとぶつかってしまった。
「あ、いえ。……こちらこそ、すいません」
私はペコリと頭を下げて謝る。
「メリークリスマス」
おじいさんはにっこりと和かい笑みを浮かべて言った。
「はい。……メリー……クリスマス」
私の返答に、おや?と首を傾げるおじいさん。
「……あまり、楽しそうじゃありませんね……。一人ですか?」
「は?あ、はい。……そう、ですけど」
うつ向きながら言う私に、それはいけませんねと、おじいさん。
「どうです?このあと予定が無いのであれば、一緒にお茶でも?」
「ええ!?」
私はつい、大きな声を出してしまう。
自分が大きな声を出したと気付いて恥ずかしくなった私は、またもやうつ向く。
……どういうつもりなんだろう?
最初のコメントを投稿しよう!